2008年04月04日
笹公人歌集『抒情の奇妙な冒険』を読む
『念力家族』『念力図鑑』に続く第3歌集。
早川書房から、それも「ハヤカワSFシリーズ Jコレクション」
というシリーズの1冊として歌集が出版されるということは凄いことだ。
『抒情の奇妙な冒険』が人生ではじめて買った歌集となった人も
たくさんいるにちがいない。そんな短歌初心者の人にも
親切でとても為になる解説を、歌人の栗木京子さんが寄せている。
(「縄」は、トイレットペーパーの替りに使うんだと思います……。)
帯文には、
寺山修司は
「架空の私」を、
笹公人は
「他人のノスタルジイ」を
手に入れた。
という山田太一さんの言葉。
歌集にはまったく関係ないけれど、
柏原よしえのシングル・コレクションを聴きながら、
僕自身の個人的なノスタルジイに浸りつつ
『抒情の奇妙な冒険』を読み進める。
泣くもんか 砂場に半分埋もれてる科学特捜隊のヘルメット
花嫁の目の黒線の太きかなテレビに映る心霊写真
「みかん箱」なる芸名候補を見たときの二人の乙女のピンチを思え
有終の美とはつまりステージにマイクを置き去る百恵の姿
もう誰もぶら下がらない健康器にぶら下がりいる不成仏霊
あとがきには、
「本歌集は、現在四十代中盤にあたる
世代の人間を主人公(私)に設定した。」
とあり、その世代に近い僕も大いに楽しめた。
短歌からイメージして描かれた
とり・みきさんのイラストもすてき。
拉致事件
色褪せたピンク・レディーのポスターが少女の帰りを待っている部屋
「今後の自分の短歌のもうひとつの大きなテーマになってくるだろう」
と言う時事詠への新たな<冒険>にも大いに期待したい。
最後に、
特に好きな歌と秀歌だと思った歌を。
しのびよる闇に背を向けかき混ぜたメンコの極彩色こそ未来
赤紙の貼られた家から暗くなる模型の町を逃げている俺
東京の夜景を映す窓の上(え)を防空頭巾の少女駆けゆく
陽だまりの春の廊下でふりむけばタイム・リープの少女に逢える
16文のリングシューズが鎮座する昭和時代のピリオドとして
二十年(はたとせ)も風呂場の隅に置かれいるスーパーボールに宿るたましい
桃色のワンピース着た案山子いてへの字の口も少女めくなり
ブランコも田んぼも家も昏くなるだいだらぼっちの影に塗られて
もう誰もいない地球の凩(こがらし)に舞うポスターのアインシュタイン
ニックネーム 異能兄弟 at 01:13| ☆☆ 異能セントワールド ☆☆









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